脱酸性化処理
工場内での一連の作業の流れをご説明いたします。
登録作業 - Entry -
工場に到着した資料はまず、Preservation Technologies L.P.(PTLP)が独自に開発した管理用 データベース(Bookkeeper Tracking System)に、 各バーコードを登録します。同時に、資料を1点ずつ 点検しながら、その状態、付属品、処理方法等を記録 します。
対象資料にページの破れや製本構造の劣化といった脆弱 な箇所が見つかった場合、処理中にそれら損傷が拡 大しないよう、紙の帯を巻くなどしてページを保護します。
このような各資料の情報は、工場内のネットワーク において共有化されており、高い安全性を確保して います。資料にやさしいヒューマン・チェックがブッ クキーパー脱酸性化処理の特徴です。
脱酸性化処理 - Treating -
書籍等の製本のしっかりした資料の脱酸性化処理は、専用のホルダを用いて 30~40 分ほ どブックキーパー 脱酸性化処理液に浸漬させます。その間、ホルダはゆ っくりと上下に動きます。これによって緩やかな水 流が生じ、処理液を隅々まで行き渡らせます。
処理が終わると、液が抜き取られ、資料は乾燥タンク に移されます。その後、本紙に残っている処理液を3 時間ほどかけて完全に気化させます。なお、気体とな った処理液は専用の装置で回収し、再利用していま す。
大型の地図や、何重にも折り込まれた資料など、機械 処理できないサイズの資料はハンドスプレーで処理 します。
ハンドスプレー処理でも機械で処理した場合と同じ 効果が得られます。ハンドスプレー処理では、資料1 枚1枚に丁寧に液剤を噴霧することで脱酸性化処理 を実施しています。
ハンドスプレー処理 - Hand Spray -
清拭作業 - Wiping -
処理後の資料には、表紙や折り込みページ、コート紙 などに脱酸性化剤である酸化マグネシウムが過度に 残留する場合があります。 そのような箇所は、専用の布を用いて一冊ずつ丁寧 に拭き取ります。ブックキーパー脱酸性化処理を実 施すると資料の簡単な掃除を兼ねることができます。
点検・梱包作業 - Repacking -
ワイピング(清拭)までの作業が終わると、資料のバ ーコードを管理用データベース Bookkeeper Tracking System に再度読み込み、工場に到着した際にコンテナ内に収納されていた順番通りのリストが出力されます。
最後にもう一度、資料の状態、付属品等を確認し、そのリストに従って、各資料をコンテナに当初の順番通りに収納します。
また、ご意向によって脱酸性化証明シールを裏表紙の見返しに貼る、あるいは背表紙の背に水性ペンで白点を打つといった作業を行います。これによって脱酸性化処理済みであることが一目でわかり、便利です。シールの貼付や背表紙の白点は米国議会図書館でも採用されています。
品質管理 - Quality Control -
ブックキーパー脱酸性化処理の場合、処理後はやや 粉っぽくなるものの、必要な処理が施されたか、見た 目には分かりません。そこで一定の割合(約 10%) でテストペーパー(品質管理用試験紙片)を資料に挿 入し、紙資料と一緒に脱酸性化処理します。その後、 テストペーパーを取り外し、その pH およびアルカ リ・リザーブ(アルカリ残留度)を測定することによ って処理の精度を観察し、品質を管理していま す。
以上がブックキーパー脱酸性化処理の一連の流れです。
当社の脱酸性化処理技術についてご理解いただければ誠に幸いです。